シリコーンゴムへの印刷や塗装を曲げても伸ばしても密着させる技術

シリコーンゴム印刷

実はシリコーンゴムへの印刷商品は身の回りにたくさんあります。エアコンのリモコン、テレビのリモコン等の電源ボタンや操作キーを見てください。ボタンはシリコーンゴム製の場合が多く、その表面には文字や数字が印刷されていますがそれがシリコーンゴムへの印刷商品です。なかなか気にかけないので知らない方も多いかも知れません。

シリコーンゴムへの印刷 シリコーンゴムへの印刷

これらの加飾された商品は、シリコーンゴムへの印刷や塗装といった加工方法となるのです。元々シリコーンゴム自体非接着性の素材であるため、写真印刷やインクジェット印刷などの一般的に使用されるインクとは性質が全く異なります。

シリコーンゴムへの密着を可能にする専用のインク・塗料を用いることが必要です。印刷後に100℃~200℃程度の熱で硬化・密着させる熱硬化での乾燥が必要になるという一般的な印刷と比較すると非常に特殊な加工方法となります。

私たちの会社では、シリコーンゴムへのこれらの印刷・塗装工程を自社で一括して行うことが可能です。

当社はシリコーンゴムへスクリーン印刷ができます

スクリーン印刷とは?

シリコーンゴムへの印刷において、最もポピュラーな印刷方法はスクリーン印刷となります。スクリーン印刷は、過去にはシルク繊維をスクリーンに使用していたことから、「シルクスクリーン印刷」と呼ばれていましたが、現在ではシルク繊維は使用せずナイロンやポリエステルなどの化学繊維をスクリーンに使用されるのが一般的となっているようです。

また、SUS等の金属繊維を用いることで化学繊維よりも細い糸のでスクリーンの製作も可能です。なお、下記の図の通り、印刷するワークは印刷面が平面に近い状態であることが必要になるため、形状的な制限が生じてしまいます。

シリコーンゴムのスクリーン印刷

シリコーンゴムへのスクリーン印刷

シリコーンゴム専用インクは追従性もあるため、弾性体であるシリコーンゴムへの印刷後の追従もあり、引っ張っても一緒に伸びますし、曲げても割れません。強い摩耗に関しては若干弱いという特性があります。

リモコンキーのような日常的に使用する場合、印刷面が摩耗してインクが薄くなる現象も珍しくはありません。この摩耗を防止するために文字印刷の上に一層透明な層を設けて、耐摩耗性を強化するメジューム印刷と呼ばれる追加工も存在します。さらにメジューム印刷のオプションで表面の艶あり、艶消しのパターン化も可能です。

なお、本印刷はオペレーターが印刷機に手作業でワークをセットするため、時間がかかり印刷出来高が少なく、生産コストが相当額になってしまうことと、印刷1回の工程で1色ずつなので、フルカラーは不可、また1色ずつの印刷となるため、多色印刷品には制限があり不向きになってしまいます。

シリコーンゴム印刷 シリコーンゴム印刷工程

ポイント

    • 追従性があるので引っ張っても、曲げても印刷は割れません
    • 強い摩擦や継続摩擦には若干弱いが透明メジューム印刷の層で保護できる
    • メジューム印刷はつや有り、つや無しを選択できる
  • 写真プリント・イラストプリントなどのインクジェット印刷はできません
  • 1色1色手作業によるスクリーン印刷でのみ対応可能です
  • インクを硬化させるのに~200℃のオーブンで焼き付けます
  • シリコーンゴム成形から印刷・塗装まで自社内で完結させてます

シリコーンゴムへのスクリーン印刷に不向きな仕様・形状

専用インクを化学繊維(一部金属)で作成された印刷版を介して塗布されることから、印刷面に凸があると印刷版とワーク(シリコーンゴム)の接触を邪魔してしまい印刷ができません。

よって、微少な凸は問題ありませんが基本印刷面は平面(凹は可)である必要があります。なお、裏面に関しては専用治具を起工することによって凹凸は関係ありません。

また、いくら平面であってもベタ印刷と言われる平面全体を塗りつぶす仕様は難しく、静電気による擦れが生じ面のインク膜厚が不均一になってしまう現象や異物の付着等が発生しやすくなるため、加工が困難になってしまいます。

シリコーンゴム印刷文字欠け
R面印刷で文字欠けNG
シリコーンゴム静電気不良
静電気による模様発生NG
ポイント

  • 印刷面は基本的に平坦であることが条件
  • 印刷面を平坦に保つための製品の凸凹を補正する治具が必要になる
  • 平面全体を塗りつぶすベタ印刷は難しい

シリコーンゴムへのパッド印刷

シリコーンゴムへの印刷は基本的にはスクリーン印刷にてご対応しておりますが、スクリーン印刷が不向きな仕様・形状については、一部制約はございますがパッド印刷でご対応ができる場合もございます。

パッド印刷とは?

パッド印刷とは、凹版を使用して版上のインキを弾力のある軟質のパッドに一次転写し、被印刷物に二次転写を行なうことで印刷する方法です。

パッドはシリコーン製の物が主流であることから、シリコーンゴム製品へのパッド印刷はシリコーン用のインクがパッドからリリースできず密着する傾向となり、シリコーンゴム製の被印刷物には転写がインクの転写が不十分となってしまい、印刷方法としては不向きでした。

しかし、パッドの素材を一から検討することにより、シリコーン用インクがパッドからリリースできるようになることで、シリコーンゴム製品へのパッド印刷を一部で可能としました。

シリコーンゴム製品へのパッド印刷とシルクスクリーン印刷の比較

パッド印刷

メリット

  • 凹凸部やなだらかな曲面部にワンポイントの印刷が可能。
  • 線形0.1mmまでの細かな線のあるデザインで印刷が可能。
  • 作業のタクトタイムが短いので低コストで生産可能
デメリット

  • 印刷範囲が小さく、縦横最大25mmまで印刷が可能。
  • 印刷可能な範囲でも、印刷の端の部分で滲み・色ムラが出やすい。
    ※印刷面積及びR形状等により要相談となります。
  • インクの膜厚が薄い為、色によっては下地が透けて、狙い通りの発色にならない場合があります。
    ※重ね塗り等に関しては、別途協議が必要です。

スクリーン印刷

メリット

  • 印刷範囲が広く、平面であれば最大縦横450mmまで印刷可能。
    ※デザイン、被印刷物の形状により最大値は変動します。
  • インクの膜厚が厚く確保できるため、色ブレが少ない。
  • 平面全体を塗りつぶすベタ印刷は難しい
  • 使用可能なシリコーン用インキの種類(色調)が豊富。
デメリット

  • 被印刷物の印刷面に凹凸や曲面があると印刷不可。
  • 細かい文字や間隔の狭い線、細い線等が印刷不可。
  • 作業のタクトタイムが長いので高コストになりがち。

当社使用の印刷機

スクリーン印刷機
ask社製:S-130
パッド印刷機
ナビタスマシナリー社製:T-5JB

シリコーンゴムへの印刷に必要な部材

① シリコーンゴム(成形品)

まずは印刷するシリコーンゴム製品ワークが必要になります。

お客様から支給いただくワークに ”印刷のみ” のご依頼は請け負っておりません。
私たちの会社で成形をしたシリコーンゴム成形品にのみ、印刷加工を行っております。

② シリコーンゴム専用インク

日本国内メーカー製を使用しておりますので、環境対策・信頼性は問題ありません。ROHS2にも対応しているインクのみとなります。

  • SDS
配合量は非開示ですが、使用インク個別の資料のご提出は可能です。
  • 食品衛生法
インク個別には取得可能ですが、証明書につきましては原則発行しておりません。必要なお客様へは有償でのご対応となります。
シリコーンゴム用インク・塗料のみの販売はしておりません。

③ 印刷版(スクリーン版又はパッド印刷版)

基本、印刷版下・ポジ・データ等を支給いただき、私たちの会社にて製版いたします。一部、現物からも製版は可能ですが、データ等を支給いただくよりも費用がUPしてしまいますのでご了承ください。また、同一製品でも多色品の場合は、1色に対して1版必要になります。

④ 印刷治具

印刷工程において、ワークへの印刷位置を一定にしてズレを防止すことと、インクがワークに接触した際にインクの粘着性の影響等により、ワークがインクに追従して持ち上がらないように押さえることを主な目的として製品形状に合わせた専用の印刷治具が、必要になります。この専用の印刷治具は、ベーク材やアルミ材などをNC加工等でワーク形状に合わせて削り出しする加工となり、ワークの形状毎に一点一様の治具となります。※形状・サイズ、印刷エリア等により、治具の価格や構造は異なります。

シリコーンゴム印刷治具

シリコーンゴムへの塗装

主に加飾及び当社オリジナルの摺動性コーティングである「サラサラコーティング」は、シリコーンゴムへ塗料をスプレー塗布にて実現させています。こちらもスクリーン印刷と同様、シリコーンゴム専用の特殊塗料を塗布後に熱乾燥で硬化・密着させる手法となります。

シリコーンゴム塗装 シリコーンゴム塗装
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サラサラコート

シリコーンゴムへの塗装条件

シリコーンゴムへの塗装は平面での塗りつぶす仕様や3次元の立体形状の表面を色づけする仕様に最適です。製品の表面と裏面と2色構造の出来映えが可能になりますが、意図的に塗装する箇所以外にも塗料が回り込んでしまうことがあります。

マスキング等の技術により回り込み防止のご対応ができない事はございませんが、マスキングすることによってコストが数倍にも跳ね上がってしまいますので、推奨しておりません。表裏で区分した、片側もしくは両側塗装を推奨します。

シリコーンゴム塗装 シリコーンゴム塗装

シリコーンゴムへのシルバー調塗装

シリコーンゴムにメタリック調の加飾について、金属粉、特殊な塗料の採用及びプライマー処理により実現が可能です。シルバー塗装はシルク印刷では出来ない、質感、高級感を表現する事が可能であたかも金属風で出来ているかのような風合いを出す事が出来ます。

また、シルバー塗料に顔料を混ぜることにより、青系や赤系などメタリック調はそのままに、さまざまな色合いの色調ができます。

シリコーンゴムシルバー塗装 シリコーンゴムシルバー塗装

シリコーンゴムへのトップコート

加飾のためのシリコーンゴムへの塗装品は、出来映えとしてムラが生じてしまうことを避けられません。着色塗料での塗装後、トップコートをお奨めします。トップコートにより、着色塗料のムラが目視で認識できないレベルになるぐらいの仕上がりになります。

シリコーンゴムへのトップコート
左トップコート後 / 右トップコート前

シリコーンゴムへの塗装に必要な部材

① シリコーンゴム(成形品)

まずは印刷するシリコーンゴム製品ワークが必要になります。

お客様から支給いただくワークに ”塗装のみ” のご依頼は請け負っておりません。
私たちの会社で成形をしたシリコーンゴム成形品にのみ、塗装加工を行っております。

② シリコーンゴム専用インク

日本国内メーカー製を使用しておりますので、環境対策・信頼性は問題ありません。
ROHS2にも対応している塗料のみとなります。

  • SDS
配合量は非開示ですが、使用塗料個別の資料のご提出は可能です。
  • 食品衛生法
塗料個別には取得可能ですが、証明書につきましては原則発行しておりません。必要なお客様へは有償でのご対応となります。

 

シリコーンゴム用インク・塗料のみの販売はしておりません。

③ 塗装治具

表裏を区分した全面塗装を推奨してますが、部分塗装などをご希望の際には専用のマスキング治具が必要になります。形状や仕様によって費用を確認することになります。

シリコーンゴムへの印刷・塗装の信頼性試験と品質管理

印刷・塗料へは主にインク・塗料の密着と摩耗を評価・試験と、目視による外観的な異常がないかを確認します。密着・摩耗に関しましては、下記の信頼性試験の判定基準がベースとなります。

試験項目 試験条件 判定基準 n 判定
1 セロテープ剥離試験 ニチバンセロテープ24mm、垂直方向に瞬時 剥離なきこと n=1 合格
2 クロスカット剥離試験 1mm方眼、100目盛り 剥離なきこと n=1 合格
3 鉛筆硬度 三菱ユニ 荷重 1Kg 10mm×5本 F以上で剥離なきこと n=1 合格
4 ウエスによる乾拭き 荷重500g、1000往復 素地露出しないこと n=1 合格
5 耐アルコール試験 荷重500g、500往復(エチルアルコール) 素地露出しないこと n=1 合格
6 中性洗剤試験 荷重500g、1000往復+40℃×90%RH×24h 外観異常なきこと n=1 合格
7 消しゴム摩耗試験 荷重500g、1000往復PILOT ER-F6T 素地露出しないこと n=1 合格
8 耐熱試験 +85℃×72H ⇒ 1H常温放置 試験項目1,2を満足する事 n=1 合格
9 耐寒試験 -40℃×72H ⇒ 1H常温放置 試験項目1,2を満足する事 n=1 合格
10 -20℃×72H ⇒ 1H常温放置 試験項目1,2を満足する事 n=1 合格
11 耐湿試験 +40℃×90%×72H ⇒ 1H常温放置 試験項目1,2を満足する事 n=1 合格
12 耐湿試験(長期) +40℃×90%×240H ⇒ 1H常温放置 試験項目1,2を満足する事 n=1 合格
13 耐温耐湿試験 +60℃×90%×72H ⇒ 1H常温放置 試験項目1,2を満足する事 n=1 合格
14 温度ショック試験 -40℃×2H ⇒ +85℃×2Hの3サイクル 試験項目1,2を満足する事 n=1 合格
15 -20℃×2H ⇒ +85℃×2Hの3サイクル 試験項目1,2を満足する事 n=1 合格
16 温湿度サイクル 80℃×90%×4H ⇒ -40℃×4Hの3サイクル 試験項目1,2を満足する事 n=1 合格
17 塗装ラード試験 +80℃×48H ⇒ 1H常温放置 試験項目3を実施 n=1 合格
18 移行試験 +60℃×90%密封 ⇒ 荷重500g 24H 移行なきこと n=1 合格
19 エチレン密封試験 +60℃ 密封 24H 試験項目1,2を満足する事 n=1 合格
20 アルコール浸漬試験 10分間浸漬 塗膜の浮き無き事 n=1 合格

試験体:シリコーンゴム+印刷

シリコーンゴム印刷検査風景 シリコーンゴム印刷検査風景
シリコーンゴム印刷クロスカット検査
クロスカット検査
シリコーンゴム印刷クロスカット検査
クロスカット

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