耐熱性シリコーンゴムは瞬間300℃耐性を含むラインナップを成形します
ゴム素材の中でもシリコーンゴムは耐熱性能に非常に優れた素材です。一般的には工業用汎用グレードでも、150℃前後の温度下ではほとんどシリコーンゴム自体の特性に変化はありません。
200℃の環境でも物性値が常態のおよそ1/2となるまでに10,000時間要するほど、安定して使用できる耐熱性能があります。高耐熱性シリコーンゴムは220℃を超える高温領域でも安定したゴム特性を維持できるグレードです。特に高温環境下で使用する場合に最適なシリコーンゴムと言えます。
高耐熱シリコーンゴムと一般シリコーンゴムとの耐熱性能の比較
グラフを見てわかるように 高耐熱性シリコーンゴムだからといって常態的に高熱に耐えるわけではありません。一定以上の高温下では一般シリコーンゴムの耐熱性よりも劣化スピードが遅くなるという性能になります。劣化した場合の製品交換の頻度が少なくなるとイメージしてください。
一般シリコーンゴム |
||||||
初期常態物性 |
300℃x72h後 → |
耐熱性 | ||||
物性値 | 変化量 | |||||
硬度50° |
硬度 | A | 50 | 70 | +20point | |
色調 | 乳白色半透明 | 乳白色半透明 | - | |||
密度 | g/cm3 | 1.15 | - | |||
引張強度 | MPa | 8.8 | 4.4 | -50% | ||
切断時伸び | % | 350 | 110 | -69% |
高耐熱シリコーンゴム |
||||||
初期常態物性 |
耐熱性 | |||||
物性値 | 変化量 | |||||
硬度40° |
硬度 | A | 40 |
300℃x72h後→ |
46 | +6point |
色調 | 茶色 | 茶色 | - | |||
密度 | g/cm3 | 1.15 | 1.15 | - | ||
引張強度 | MPa | 9.2 | 5.2 | -43% | ||
切断時伸び | % | 600 | 480 | -20% | ||
当社常時在庫 | × | - | - | |||
材料価格 | 3 | 1 | - | |||
硬度60° |
硬度 | A | 60 | 60 | ±0 | |
色調 | 茶色 | 茶色 | - | |||
密度 | g/cm3 | 1.2 | 1.2 | - | ||
引張強度 | MPa | 9.2 | 6.2 | -33% | ||
切断時伸び | % | 290 | 260 | -10% | ||
当社常時在庫 | ○ | - | - | |||
材料価格 | 3 | 1 | - | |||
硬度80° |
硬度 | A | 82 | 87 | +5point | |
色調 | 茶色 | - | ||||
密度 | g/cm3 | 1.29 | - | |||
引張強度 | MPa | 9.3 | 5.1 | -45% | ||
切断時伸び | % | 270 | 90 | -67% | ||
当社常時在庫 | ○ | - | - | |||
材料価格 | 3 | 1 | - |
シリコーンゴムと合成ゴムとの限界温度比較
主なゴムの種類(名称) | 略号 | 耐熱限界温度 (℃) |
耐熱安全温度 (℃) |
シリコーンゴム | VMQ | 230 | 180~200 |
高耐熱性シリコーンゴム | 270 | 220~250 | |
ニトリルゴム | NBR | 120 | 80~100 |
水素化ニトリルゴム | HNBR | 140 | 110 |
フッ素ゴム | FKM | 230 | 200 |
エチレンプロピレンゴム | EPDM | 140 | 120 |
クロロプレンゴム | CR | 110 | 70 |
アクリルゴム | ACM | 160 | 140~150 |
ブチルゴム | IIR | 140 | 100~110 |
ウレタンゴム | U | 100 | 70 |
天然ゴム | NR | 80 | 65~70 |
耐熱限界温度とは?
比較的短時間の間に、物性を損なわず何度まで耐えるかという最高限界温度
耐熱安全温度とは?
使用される環境において、著しく物性を損なわず連続使用が可能である、使用安全耐熱温度
耐熱性シリコーンゴムの使用事例
自動車エンジンルーム内のガスケット、電子レンジのドア用パッキン、高耐熱電線材・ケーブル材等、近年増加しているさらなる高温環境下の中でのゴム性能の安定化を目指し、実現させた素材になります。
【カスタム対応】高耐熱性シリコーンゴムシート
硬度 | ゴムシートサイズ | 最小厚mm (公差) |
最大厚mm (公差) |
厚み刻み (mm) |
表面 | 色調 |
40° | 300X300 | 0.5 (±0.1) |
10.0 (±0.5) |
0.1 | 通常みがき | 茶色 |
300X300 | 0.5 (±0.1) |
10.0 (±0.5) |
0.1 | ブラスト調 | ||
280X380 | 0.5 (±0.15) |
10.0 (±0.5) |
0.5 | 通常みがき | ||
280X380 | 0.5 (±0.15) |
10.0 (±0.5) |
0.5 | ブラスト調 | ||
280X380 | 0.5 (±0.15) |
10.0 (±0.5) |
0.5 | 鏡面加工 | ||
450X450 | 1.0 (±0.15) |
10.0 (±0.5) |
0.5 | ブラスト調 | ||
500X500 | 1.0 (±0.2) |
3.0 (±0.3) |
0.5 | ブラスト調 | ||
60° | 300X300 | 0.5 (±0.1) |
10.0 (±0.5) |
0.1 | 通常みがき | 茶色 |
300X300 | 0.5 (±0.1) |
10.0 (±0.5) |
0.1 | ブラスト調 | ||
280X380 | 0.5 (±0.15) |
10.0 (±0.5) |
0.5 | 通常みがき | ||
280X380 | 0.5 (±0.15) |
10.0 (±0.5) |
0.5 | ブラスト調 | ||
280X380 | 0.5 (±0.15) |
10.0 (±0.5) |
0.5 | 鏡面加工 | ||
450X450 | 1.5 (±0.15) |
10.0 (±0.5) |
0.5 | ブラスト調 | ||
500X500 | 1.5 (±0.2) |
3.0 (±0.3) |
0.5 | ブラスト調 | ||
80° | 300X300 | 1.0 (±0.1) |
10.0 (±0.5) |
0.1 | 通常みがき | 茶色 |
300X300 | 1.0 (±0.1) |
10.0 (±0.5) |
0.1 | ブラスト調 | ||
280X380 | 1.0 (±0.15) |
10.0 (±0.5) |
0.5 | 通常みがき | ||
280X380 | 1.0 (±0.15) |
10.0 (±0.5) |
0.5 | ブラスト調 | ||
280X380 | 1.0 (±0.15) |
10.0 (±0.5) |
0.5 | 鏡面加工 | ||
450X450 | 1.5 (±0.2) |
8.0 (±0.5) |
0.5 | ブラスト調 | ||
500X500 | 1.5 (±0.2) |
3.0 (±0.3) |
0.5 | ブラスト調 |
高耐熱性シリコーンゴム採用条件とデメリット
採用条件
- 常時在庫品硬度は60°、80°の2タイプ、40°はお取り寄せにてラインナップとなっております。
- 試作対応、量産対応 共に、製品化へは金型が必要になる材料になります。
- 製品サイズは当社設備の関係で最大で500mmX500mmX100mm以内になります。
- ご採用にあたって、使用用途等の詳細をお聞きする場合がございます。ご協力お願いします。
デメリット
コスト高
おおよそですが、汎用グレードの一般シリコーンゴムに対して、3~4倍の材料価格となります。本グレードよりも安価な一般シリコーンゴムでも短時間であれば耐熱性があり使用が可能です。まずは、一般シリコーンゴムの試験片等で、実用試験して高温下での条件がクリアできなかった場合の手段としての採用をご検討ください。オーバースペックの場合がございます。
加工性(金型からの離型性)が悪い
金型を用いた成形品は必ずバリを除去する仕上げを伴うのですが、高耐熱性シリコーンゴムの場合金型への張り付きが著しいため、複雑形状な物・穴が複数あるような形状は離型できず形にならない場合やバリが金型内に詰まってしまう可能性がございます。本材料グレードのご使用を希望される場合、事前に図面やデータ等で当社担当の方で形状の確認をさせていただき、製作可能と判断した上での採用をお願いいたします。
材料入手リードタイム
高耐熱性シリコーンゴムは、非常の特殊なグレードのため同等品の代替品が難しく且つ材料入手のリードタイムについて1~3ヶ月程度要してしまう可能性がございます。特に硬度40°品は常時在庫しておりません。メーカー材料在庫がない場合等、お時間がかかりますので予めご了承願います。
着色について
基本、着色はできません。
高耐熱性シリコーンゴムコンパウンドの高温下特性が問題なかったとしても、着色用の顔料が凍結点を超えてしまう可能性を否定できないため、高耐熱性シリコーンゴムグレードの着色は行っておりません。
高耐熱性シリコーンゴムのよくある質問Q&A
金属や樹脂との一体成形はできるのですか?
高温劣化するとどうなるのですか?
シリコーンゴムの配合や成形条件、環境条件によって異なりますが、大きく二種類となります。
①熱によりゴムの老化現象が発生し、シリコーンゴムが分解して軟化してしまいます。
②シリコーンゴム分子間の架橋(硬化)がさらに進行し、もしくは転移して硬度が上昇して脆くなる現象が発生します。
これらは、ポリマー・架橋・配合剤 の3つの要素において発生します。
接着は可能ですか?
試作は費用をかけないで対応できませんか?
あいにくですが、金型が必要になる材料になります。しかし、高耐熱性シリコーンゴムシートを成形し抜き型で加工できる形状であれば試作の費用は低減できる可能性がございます。
サラサラコートは可能ですか?
高温の油にも耐性はありますか?
お問い合わせ
他にこんな記事が読まれています
一般的にシリコーンゴムは燃えにくい素材(難燃性)と言われていますが、決して全く燃えない素材(不燃性)ではありません。シリコーンゴムに一度着火してしまうと、そのまま燃え続けてしまう素材です。 難燃性シリコーンゴムとは[…]
一般的なシリコーンゴムの耐寒温度は-50℃前後になります。-50℃以下の冷凍倉庫や航空機関係や宇宙開発の部品として耐寒性シリコーンゴムが使われています。ミラブルタイプのシリコーンゴムを使って金型を用いた成形品やシートなどを提供しております。[…]
一般的なシリコーンゴムは 高圧スチームのもとでは徐々にシロキサン結合が加水分解して ゴムの寿命を短くしてしまう現象がおきます。その特性を補うために生ゴム・加硫剤の選択、充填剤の表面処理などを改良し、高圧スチームに対応した特殊グレードの紹介に[…]