フロロシリコーンゴムで耐油性や耐オイル性、耐燃料特性の成形品製造します
フロロシリコーンゴムは一般的なシリコーンゴムの特徴である耐熱性・耐寒性に加えて、さらに耐油特性、耐燃料特性も持ち合わせたシリコーンゴムグレードです。フッ素ゴムに匹敵する耐オイル性を持つので、主に自動車や航空機の耐燃料、耐油、耐熱、耐寒性を要する過酷な環境下で使用されます。
フロロシリコーンゴムと一般シリコーンゴムの組成の違い
- 耐燃料系に優れる
- 耐油性に優れる
- 耐熱性に優れる
- 耐寒性に優れる
一般シリコーンゴムであるVMQ(ビニルメチルシリコーンゴム)に含まれるアルキル基の一部をフッ素化したものがフロロシリコーンゴム(FVMQ)です。構造がVMQの特性に加え、耐油性や耐アルコール性を生み出しています。一方、汎用VMQの欠点である機械特性の弱さはそのままで、耐薬品性においても活性の弱い薬品や非極性溶剤への耐性を有する程度です。
各種ゴム素材との比較
ASTM D2000評価試験(自動車に使用されるゴム製品の標準分類システム)
フロロシリコーンゴムの物性と一般シリコーンゴムの物性比較
フロロシリコーンゴム |
||||||||
初期常態物性 |
⇒ | IRM903オイル | FUEL C | |||||
150℃X70h | 23℃x70h | |||||||
浸漬後の変化率 | 浸漬後の変化率 | |||||||
硬度40 | 硬度 | A | 42 | |||||
色調 | 淡黄色 | 硬さ変化 | -3 | 硬さ変化 | -6 | |||
密度 | g/cm3 | 1.38 | 引張変化 | -27% | 引張変化 | -57% | ||
引張強度 | MPa | 8.5 | 伸び変化 | -7% | 伸び変化 | -42% | ||
切断時伸び | % | 480 | 体積変化 | +3.3% | 体積変化 | +24% | ||
引裂強度(形) | N/mm | |||||||
硬度60 | 硬度 | A | 61 | |||||
色調 | 淡黄色 | 硬さ変化 | -4 | 硬さ変化 | -9 | |||
密度 | g/cm3 | 1.45 | 引張変化 | -25% | 引張変化 | -43% | ||
引張強度 | MPa | 11.2 | 伸び変化 | -15% | 伸び変化 | -36% | ||
切断時伸び | % | 280 | 体積変化 | +4% | 体積変化 | +24% | ||
引裂強度(アングル形) | N/mm | 22 | ||||||
硬度70 | 硬度 | A | 71 | |||||
色調 | 淡黄白色 | 硬さ変化 | -4 | 硬さ変化 | -8 | |||
密度 | g/cm3 | 1.53 | 引張変化 | -18% | 引張変化 | -29% | ||
引張強度 | MPa | 8.5 | 伸び変化 | -5% | 伸び変化 | -26% | ||
切断時伸び | % | 190 | 体積変化 | +3% | 体積変化 | +22% | ||
引裂強度(アングル形) | N/mm | 17 | ||||||
一般シリコーンゴム |
||||||||
硬度50 | 硬度 | A | 50 | ⇒ | ||||
色調 | 乳白色半透明 | 硬さ変化 | -19 |
N/A |
||||
密度 | g/cm3 | 1.15 | 引張変化 | -63 | ||||
引張強度 | MPa | 8.8 | 伸び変化 | -49 | ||||
切断時伸び | % | 350 | 体積変化 | +51 | ||||
引裂強度(アングル形) | N/mm | 17 |
※本データは代表値であり、規格値・保証値ではありません
フロロシリコーンゴムの優れた特性
自動車用エンジンオイル、燃料(ガソリン、軽油、バイオディーゼル燃料)に対して耐性があり、オイル、燃料による膨張率が一般シリコーンゴム(VMQ)と比較して著しく低いため、自動車向けのシール部材(パッキン・ガスケット等)への使用に最適です。
耐エンジンオイル
150℃、1000時間に渡るエンジンオイル浸漬試験後も、5%以下の膨潤率で(ミラブルタイプ)、ゴム性能も維持します。
150℃X1,000時間にわたるエンジンオイル浸漬試験 体積変化率・伸び変化率 IRM903 |
耐燃料性
自動車燃料(ガソリン、軽油、バイオディーゼル燃料)に対して耐性があり、燃料による膨潤率が一般のジメチル シリコーンゴムと比較して著しく低いため、 Oリングやガスケットなど静的、動的両方のシーリング用途に最適です。
120℃X72時間にわたる耐燃料試験 体積変化率 |
耐ブローバイガス性
各種のメンブランやダイヤフラムに使われる材質は、耐ブローバイガス性が求められます。ブローバイガスとは、 排気ガス、未燃焼ガス、エンジンオイル等の混合気体であり、エンジンデザインや走行条件により組成は大きく変 わってきます。ブローバイガスのテストで、高い耐久性を示すとともに、実車試験においても、優れた結果を残しています。
BMW GS 97018 耐ブローバイガス試験 |
参考文献:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ様カタログより引用
低温から高温までの幅広い温度対応
フロロシリコーンゴムは、幅広い温度領域において優れた機械的特性を示し、長期間に渡り信頼できる機能を発揮します。また温度の変化に対して硬さの変化が少ないため、メンブランやダイヤフラムなどへの応用に適しています。
フロロシリコーンゴムの一般的な熱的特性
(熱伝導率および線膨張係数は製品によって異なります)
- 使用温度領域 -55から200℃
- 熱伝導率 0.25W/ (m・K)
- 線膨張係数 2 x 10-4 1/K
フロロシリコーンゴムを使用した製品例
フロロシリコーンゴムのデメリット
- 材料価格が非常に高い
- 成形性が悪い
- 成形品の仕上げ性が悪い
フロロシリコーンゴムのよくある質問Q&A
フロロシリコーンゴム製品の価格帯は?
金型不要でできますか?
希望の色に調色・着色できますか?
硬度は選べますか?
フロロシリコーンゴム特殊グレードの取り扱いはありますが?
お問い合わせ
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