ゴム金型の表面・メッキ・バリ残りでシリコーンゴムの出来映えが決まります
ゴム金型の構造は独特な設計基準で作成されます。各社のノウハウが盛り込まれます。これが会社の技術力に繋がっています。特にバリ発生の仕組みや金型表面状態、メッキの役割、「喰い切り溝」が付いた独特な金型構造を紹介します。
プラスチック成形ではゲートから射出して「バリ無し」で成形します。ゴム成形の場合は必ず“羽根付き餃子?” ”羽根付きタイ焼き?“のような「バリ付き」で成形されます。このバリを容易に取り除くため、金型に「喰い切り」と呼ばれる特別な溝を彫り込みます。この溝を施すことで思わぬ副作用が生じる場合もございます。
ゴム成形でバリが発生するメカニズム
簡単に説明します。
ゴム成形は 基本的には“鯛焼き”の型と同じような構造で 下の金型に材料をセットして上の金型と挟み込んで製品を形成させます。材料は製品の隅々に流し込むために多めにセットします。多めにセットするので製品に充填されるとあふれ出ます。製品外にあふれ出て硬化した材料がバリとなります。
バリ取りのための金型構造
あふれ出たバリを容易に取り除くために 金型に「喰い切り溝」を彫り込みます。製品と「喰い切り溝」の幅スペースを最小にすることで引きちぎるように切り離すことができます。この「喰い切り溝」の形や幅スペースは材料の種類や硬度、製品のボリュームで設計します。これがノウハウになりゴム屋さんの技量になるとも言えます。
喰い切り溝
製品の内外にバリ仕上げを容易にするために金型に強制的に掘った溝。喰い切り溝がないときれいに手仕上げできない。
オーバーフロー溝
製品と喰いきり溝には材料を充填させる必要があります。あふれ出た材料をプールする溝になります。オーバーフロー溝があることで材料の流動性向上およびバリが厚くならない役割があります。
ゴムのバリ取り作業
ゴムのバリ取りは基本的に作業員が1つ1つ手仕上げで行います。「喰い切り溝」を引っ張ることで製品と離れるきっかけを作るとスーッと一筆書きのように全周を引き離すことができます。
成形圧力不足 や 材料が多かったり するとバリが厚くなり 引き離すのが難しくなったり、バリが残る原因になります。仕上げ作業員泣かせの出来映えですと手仕上げできず、ハサミ仕上げやニッパーでの仕上げが強いられます。
ゴム金型の欠点。喰い切り溝が金型改造を阻害する
ゴム金型に必要な「喰い切り溝」は 金型修正や金型改造の時に 副作用を起こす場合があります。
製品の内外に沿って「喰い切り溝」を彫り込みますので この溝が 製品を左右に大きく修正・改造する時に邪魔になり思い通りにできない場合があります。ここが射出成形によるプラスチック成形型との大きな違いになっております。
- 製品の金型レイアウトに対して深く彫り込む場合
- 「喰い切り溝」を溶接で埋めることができて削り直しできる場合
ゴム金型の表面処理の種類
ゴム製品の表面状態は 金型表面状態をそのまま拾って形成されます。ゴム製品の表面状態によってベタベタ感が生じたり、比較的サラッと仕上がったり、ピカピカな表面にできたりします。金型起工時にはゴム製品の機能によって 金型表面を選定する必要がございます。
当社では主に4種類の表面処理を施しております。
- 通常仕上げ(通常処理)
- ブラスト仕上げ(ブラスト処理)
- 鏡面仕上げ(鏡面処理)
- エッジング加工(特殊処理)
通常仕上げ(通常処理)
金型は基本的に削りだします。削る際の刃物の削り跡(ツールマーク)が金型表面に現れます。このツールマークを磨いて目立たない程度に仕上げた表面状態をいいます。コスト的にも安価になりますので通常採用される表面状態です。 |
ブラスト仕上げ(ブラスト処理)
ブラストショットと呼ばれる砂を金型表面に吹き付けてサンドペーパーのような表面に仕上げます。砂粒の大きさによってブラストの目が設定できます。ゴム製品のべたつき感を抑えることができる安価な方法で通常処理同様に採用されています。 |
鏡面仕上げ(鏡面処理)
金型キャビティー表面を、鏡のように磨き上げてピカピカにする「鏡面仕上げ」という手法です。特に材質の高透明感を要求される場合に採用されることが多い手法になります。人の手で磨き倒しますので工期と費用が掛かります。磨くことでゴム製品の表面がべたついてしまうことが副作用となります。 |
エッジング加工(特殊処理)
肌目や皮目など独特な表面も表現できます。専門業者がエッジング加工という製法で金型表面に模様を転写させます。ローレットなどの加工も可能です。 |
ゴム金型用メッキ考察
ゴム製品の製造には基本的に金型が必要になります。金型表面にはメッキを施すことを標準にしております。成形された製品を金型から取り出す際の離型性の向上や、金型の長期保管によるサビ腐食防止など、製品を高品質に保つためにメッキ処理は必要不可欠です。
メッキの皮膜厚さは約4~6μで、ゴム金型のどの種類のメッキ種類においても差異は殆んど有りません。この厚みであれば、製品寸法に影響することもほぼ無く、金型設計時にメッキの膜厚を考慮する事は、必要ないと考えます。
ゴム用金型メッキの目的
- 酸化腐食、錆びなどの、劣化防止
- 離型性の向上、及びコントロール
- 耐摩耗性
ゴム用金型メッキの種類と選択
- 硬質クロームメッキ
- 無電解ニッケルメッキ
- 無電解ニッケルメッキ(テフロン複合メッキ)
当社で取り扱う、ゴム成形金型に施すメッキとして、大きく分けると3種類のメッキ加工方法があります。金型の形状、使用するゴム材料、製品のボリューム、製品の企画数、使用期間、予算コスト、試作か、量産か、など全てを考慮して最適なメッキを選択いたします。
硬質クロームメッキ
- メッキが硬質なので金型保護に有効
- 長期間使用に耐える耐久性
- 金型汚染が高い材料使用での金型洗浄頻度が高い場合に有効
- 離型性良好
- シンプル形状でのコスト安
- 製品の複雑な彫り込み部分や深い部位、鋭角な処理部へのメッキが苦手
- 複雑な形状になると別途メッキ治具代が発生する
- 均一なメッキ厚みの処理が不安定
- 意匠面の出来映えが不安定
デメリットの原因
メッキが電気(電解)メッキであり、通電部の強弱により電着操作に差異が出てしまう為に起ります。これを補う為、別に金属性の治具を作り、それを電極代りにスパークさせ、メッキがのりにくい部位をサポートする事も出来ます。
しかし、この治具の作成コストが発生し、また形状的に微細で複雑な製品となると、この治具自体出来ないケースも多々あり、金型の深い部位や、鋭角な部位へのメッキを断念せざるを得ない時も、少なくは有りません。
無電解ニッケルメッキ
- 複雑な部位、掘り込みの深い部位、鋭角な部位などにも、均一な厚みのメッキ皮膜形成
- メッキ治具も不要であり、製品形状的に処理できない部位は発生しません
- 複雑な形状製品での工期短縮
- クロームメッキに比べて耐久性は弱い
- クロームメッキに比べて離型性や弱い
- クロームメッキに比べてコスト高
- 過酸化物架橋での加硫方式のゴム材料でしか使う事ができない
デメリットの原因
過酸化物架橋の材料
・シリコーンゴム
・パーオキサイド加硫系のEPDMなど
ゴムの配合に含まれる硫黄成分が、ニッケルメッキ層と反応してしまい、メッキ皮膜を破壊してしまいます。仮に誤って、無電解ニッケルメッキの金型にCRなどの合成ゴムで成形すると加硫したゴムはベッタリと金型に貼りついてしまい、無理やり剥がすことにより、メッキごと、金型から剥離してしまうことになります。
無電解ニッケルメッキ(テフロン複合メッキ)
- テフロン配合のメッキなので離型性が優れている
- 金型上型・下型での離型性のコントロール
- 複雑形状の離型時間短縮
- 工期短縮
- 過酸化物架橋での加硫方式のゴム材料でしか使う事ができない
- コスト高
採用される理由
相対的にコスト高で離型性に大差がなのに採用する理由としては、特に薄物のシリコーン製品が上型に付いたり下型に付いたりと「なき別れ」という現象になることがあります。こうなりますと製品が金型解放時に引きちぎれてしまうため、上下どちらかの金型に付けるコントロールが必要な際に採用します。
またボリュームがある製品で複雑形状ですと メッキ治具が必要になるクロームメッキですとコスト高や工期長が生じるため 対策としてテフロンメッキを使用します。
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シリコーンゴムは有機合成ゴムに比べ、特に耐熱性、耐寒性にすぐれ、更に耐候性、熱伝導性、電気特性、反発性等がはるかに優れています。特に耐候性に関しては、耐候性試験を10年以上続けても劣化がほとんどなく、試験結果より推定すると100年程度でもゴ[…]
私たちの会社では、シリコーンゴム製品の可能性を追求しています。 シリコーンゴム優れた特徴として 高度な耐久性・耐熱性・対オゾン性を持ち合わせます。更に電気特性・非粘着性にも優れ、精密電子機器部品、自動車関連部品・医療関連機器・食品関連[…]
「品質は良くて当たり前」顧客からはそう言われていますし、当社もそう認識しており品質維持は最優先に取り組んでおります。 当社はシリコーンゴムの持つ特性をよく理解しているからこそ、モノ造りの課程で生じる障害や難題を最短で解決することができ[…]