ゴムのブルーミング(ブルーム)現象
ゴムのブルーミング(ブルーム)bloomとは、一般的には成形後、時間経過と共にゴム表面にうっすらと白っぽく粉が吹いたようになる現象です。本来、その配合で必要な加硫時間が微妙に足らない場合の加硫不足や材料配合自体が適性配合で無い場合などに見られます。
粉がふいたような物質は 加硫剤や加硫促進剤、老化防止剤などの配合剤が時間経過と共に表面に噴き出てくる物です。
機能上は問題にならない場合が多いですが見た目の問題で外観不良になる場合があります。因みに、この粉体が液体になると(ブリード)breedと言います。
シリコーンゴムのブルーム
正規の工程をふむとシリコーンゴムでブルームするということはほとんど起きません。シリコーンゴムの場合、2次加硫を行うことで工程が完了します。2次加硫工程で余分な配合物は除去されるため 時間経過と共にブルームすることは無いのです。
当社で確認したことのあるシリコーンゴムのブルームは お客様から相談があったビニール袋に密閉された状態の2次加硫が行われていない製品です。こちらも追加で2次加硫することで現象は解消されました。
また、低温で加硫させる(通常170℃/低温120℃)特殊な過酸化物加硫剤を配合させたシリコーンゴム材料の場合で、製品表面が薄っすらと曇るような粉をまとったような状態になる場合がありました。こちらも長めの2次加硫でブルーム現象は解消されています。通常の過酸化物加硫剤では見られない現象です。
合成ゴムのブルーム
ブルームと言えば、主に合成ゴムの事例が圧倒的に多いのですが、原因は、加硫系の薬品や老化防止剤などの配合量による材料が起因する場合と加硫条件の温度や時間によるものと分けられます。
合成ゴムはシリコーンゴムと違って 各社で特色を持った様々な配合の種類が存在しており、それぞれ性格が違います。製品の形状によっては、温度を下げたり時間を短くしたりしなければ金型から取り込めないものもあり、ブルームしやすい条件になってしまう時もあります。
完成品のゴム特性は条件を満たしている場合が多く、使用には問題ないのですが 見た目の変化で異常に感じてしまう場合もございます。配合ミスや加硫不足ですと実際にはゴムは固まらないのでブルーム以前の問題となります。
※一般論ですのでブルーム発生品に異常がある場合もございます
ブルームの原因
初期段階ではブルームしていなかったゴム製品がブルームする原因として考えられる事
加硫不足
- 正規の加硫時間を施さなかった場合
- 成形温度の低下
ゴム練り不足
- 正規の練り工程回数を行っていない
- 配合剤の投入順による混ざり具合のバラツキ
配合不良
- 新規配合の場合で適性配合になっていない
- 適性な配合剤の投入漏れや適量でなかった場合
完成品の保管状況
- 高温多湿の保管状況だと発生する確率が高くなる
- 密閉状態だと生じる場合がある
ブルームする時期や期間(時間)や原因は明確な方程式がありません。ブルームが起きて気づく場合がほとんどです。加硫直後、製品が冷めたら発生する場合もあり、素手で触った跡や、在庫として保管していたらと原因はさまざまです。
ブルームの対処、対策
配合の見直し
- シリコーンゴムの場合は配合を変えることはほぼ無い(加硫剤・顔料以外)
- 合成ゴムの場合は加硫剤や老化防止剤、ワックス類はブルームの原因になる場合が多いので調整を行います。副作用として加硫系の配合変更はゴム特性が変わってしまう場合がある
ゴム練り工程見直し
- 一番の要因になる可能性がある工程
- 配合剤の適量、投入順序をトレースする
成形工程の見直し
- 適性な成形温度、適性な加硫時間の見直し
保管環境
- 高温多湿での保管は避ける。冷暗所がベター
- ビニールなどで密閉することは避ける
再生方法
- オーブンなどでの熱処理が有効です。アウトガス処理を強制的に行うことができます。但し、ゴム材質によって有効な温度や時間が違うので少量で検証してから実行することが望ましい
- アルコール拭きで除去できますが、時間とともに再発する可能性はあります
ブルームの原因が何なのか見極めるのは難しですが まずはその材料が正しく加硫する材料だったのかをキュラストメーターで確認することが必要です。材料の異常なのか、その他の異常なのかを判断する材料になります。
一般的なゴムは熱と圧力で熱硬化させます。このことを加硫・架橋と呼びます。一部の液状シリコーンゴムなどは自然硬化するタイプもあります。プラスチックは原材料を溶かして金型内で冷やして固めますが ゴムの場合は熱を加えて固めます。 加硫と架橋(パ[…]
ブルームの効果
一般的には不良とみなされがちですが、ゴム本来の機能的な物性を犯すようなことはなく、ブルーム現象により粉化した配合剤がゴムの表面被覆することで、空気中のオゾンや紫外線などからゴム表面を保護し、耐候性を向上させる効果があり、また表面の潤滑性を向上させる効果も期待できます。
当社では事例はありませんが、上記の効果を狙い意図的にブルームしやすいゴム配合を立てられる会社様もあるようです。
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